紲喜

世界の菓子をめぐる

ティラミスはどこから来たのか|北東イタリアから世界へ広がった歴史|SS0005

ココアの褐色、その下に重なる淡いクリーム、コーヒーを含んだやわらかなビスケット。ティラミスは、切り口を見るだけでも味を思い浮かべやすい菓子です。それなのに「どこで生まれたのですか」と尋ねると、答えはひとつにまとまりません。 イタリア北東部のトレヴィーゾには、店と職人の歩みを通して語られる歴史があります。その東に位置するフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州には、別の料理人や古いメニューを手がかりとする説明があります。さらに海を渡った日本では、1990年の流行を覚えている人もいるでしょう。 この道のりをたどるに ...

季節を彩る菓子

ラマダンとバイラムのバクラヴァ|トルコの祝いに重なる甘いもてなし|SS0004

薄い生地を幾重にも重ね、ナッツを挟んで焼き、甘いシロップをしみ込ませる。トルコの菓子バクラヴァは、小さな一切れの中に、香ばしさと濃厚な甘さを閉じ込めています。 店先に並ぶ姿も華やかですが、この菓子がとりわけ気になるのは、人を迎えるために大きな盆や箱に用意されるときです。 ラマダンの夜、そして断食月が終わったあとの祝祭。なぜバクラヴァは、こうした時期と結びついているのでしょうか。 その背景には、オスマン帝国の宮廷で菓子を配った儀礼と、家族や親戚を訪ね、甘いものでもてなす暮らしがあります。ただし、宮廷の行事が ...

文化としての菓子

イタリアの食卓とティラミス|日常・祝い・もてなしをつなぐ菓子|SS0003

ココアをまとった表面にスプーンを入れると、白に近いクリームの下から、コーヒー色の生地が現れます。大きな器から小皿へ取り分けても、最初から一人分のグラスに重ねても、そのひと口を待つ楽しみは変わりません。 ティラミスには、菓子店で完成品を選ぶ楽しさと、家で用意して誰かに振る舞う楽しさの両方があります。 イタリアの料理番組や家庭向けのレシピでは、ティラミスは身近な定番として扱われています。一方、トレヴィーゾのレストランでは、店の歩みと結び付く看板のデザートでもあります。同じ名前の菓子が、家庭の台所と外食の席、そ ...

お菓子のレシピ

ティラミスの基本レシピ|卵黄を加熱して、なめらかに作る|SS0002

 ※ この記事のレシピは、PDFを無料でダウンロードできます。 ココアの下にスプーンを入れると、淡い色のクリームと、コーヒーを含んだ生地が一緒に持ち上がります。口に入れたときに味が重なるのは、材料をすべて混ぜてしまわず、異なる層として組み立てているから。 ティラミスは、その重なりを家庭の台所でも楽しめるイタリアのデザートです。 オーブンで焼く工程はありません。ただし、混ぜればすぐに完成するわけでもありません。クリームの状態を整え、ビスケットに水分を含ませ、冷蔵庫でなじませる。この三つの仕事が、なめらかさと ...

世界の菓子をめぐる

ティラミスとは|コーヒーとマスカルポーネが重なるイタリア菓子の物語|SS0001

四角く切り分けた一皿に、淡いクリーム色と、コーヒーを含んだ褐色の生地が交互に現れます。表面には薄くカカオ。フォークではなくスプーンを入れると、クリームはなめらかに沈み、その下からほろ苦い香りが立ち上がります。 ティラミスは、日本ではしばしば「イタリアのケーキ」と紹介されます。ただし、一般的なスポンジケーキのように、生地とクリームを組み上げて焼く菓子ではありません。 コーヒーを含ませたサヴォイアルディとマスカルポーネのクリームを重ね、冷やして落ち着かせる「ドルチェ・アル・クッキアイオ(スプーンで食べる菓子) ...